リフォーム 東京の成功事例

前例がないので、多くの人たちはその成果について懐疑的だが、実質的に他にもっと良い選択肢があるかというと、それはまったくないのである。
しかも、債券市場という経済の心拍数を示すところが猛反発しているならともかく、現在のように市場が国債に史上最高値をつけて今の実験を支援しているなかで、あえてこれまでの努力を放棄して大恐慌シナリオを選ぶ理由はないだろう。 もちろん、本当にこの実験の成功を祝うのは、民間企業のバランスシートがきれいになって、問題を処理することができるということである。
そして、市場の声は、株式市場も債券市場もこの実験を続けるように大声援を送っている。 しかも、企業の有利子負債残高は、Mにあるように一時に比べ大幅に減少しており、これまでの官民の努力が決して無駄ではなかったことになる。
これだけ財政赤字が大きくなってくると、どこかで国債の消化ができなくなるのではないかという心配が出てくる。 この点について、私は以前から、国債の消化に問題が出てくる前兆は金利の上昇にあり、民間資金需要の回復から金利が大幅に上昇したら、バランスシート不況は終わり、景気も自律回復に戻ったということだから、財政再建に走らなければならないと言い続けてきた。
しかし現状は、四年前に比べて三五兆円も民間資金需要が減少しており、その結果金利は下がるばかりで、国債消化を心配する状態からますます遠ざかっている。 つまりこの間、金利が大幅に下落し、国債の価格が大幅に上昇したということは、以前に比べ国債の需要は国債の供給を大幅に上回っていることを意味しているのである。
こうして見ると、よほど他に何もすることのないヒマな人たちを除けば、このような市場の現実を無視して国債消化を議論するのは時間の無駄だと思われる。 金利以外にも国債の消化状況を判断する手がかりはある。
それは国債がどのような通貨で発され、どこの国の人が買っているかを見るということである。 彼らがお金を借りにきた時に、財政赤字をバッサリ切ることができた時だろう。
そこまでやらなければ、本当に実験は成功したとは言えないからである。 その意味では、最終ゴールに達するまでは、まだ課題がたくさん残っていることになる。
しかし、それでも一四○兆円の堤防が一三○○兆円の洪水を止めてきた成果には絶大なものがあり、それらは決して過小評価されるべきではない。 また米国は現時点で、財政は黒字だが大きな経常赤字国であることに加え、過去に外国人に買ってもらった国債が大量にあることから、基本的にAの段階になる。

ここでもし米国の経済運営が、これら外国人投資家の信用を失うようなことになったら、彼らは一気にそれらの債券を売りかねない。 だからこそ米国は、外国人投資家による「アメリカ売り」を恐れ、彼らを安心させるために、特に為替政策は細心の注意をもって運営しているのである。
これに比べ、日本はただでさえ大きな経常黒字国であり、しかも国債は自国民が買っているから佃の分類となる。 日本は株式市場が外国人に支えられているという特殊事情はあるものの、国債市場は圧倒的に自国民によって形成されており、その分のリスクは少ないのである。
国際比較で見ても、今の日本の国債消化状況は一番安全なところにあるのである。 日本の国債市場は、ほとんど完全に自国民によって支えられているだけでなく、債券価格は史上最高値、利回りは人類史上最低となっている。
その意味では、今の日本の国債市場はつまり自国通貨建てで、自国民が喜んで(=必死になって)買っている状況なのである。 したがって、ここから利回りが正常化(一○年債で五〜六%)していく段階になり、そこからA、Bを経て国債の消化に問題が表面化するのは、あったとしてもまだまだ先のことであろう。
しかも、それはAやBといった前触れが出てからさらに後になる。 その意味では、今の状態から側も通り越して破綻した後の世界を心配するのは、かなり賛沢な心配だと言えよう。
そんな先のあるかないかの事態を心配するくらいなら、目先のもっと重要な課題に全力を投入するのが、政策担当者の責任であると思われる。 また、国債価格が史上最高値近辺ということは、これらを保有している投資家は極度の高度恐怖症に陥っている可能性がある。
ということは、国債市場にとってちょっとでも悪いニュースが出たら、彼らはそれこそ反射的に国債が高いうちに売ってしまおうとするだろう。 ということは、この市場は下振れリスクが非常に高いということである。

ただ、これまでも何回もショックが発生し、そのたびに国債市場は急落したが(価格は下落、利回りは上昇)、毎回、市場は短期間で安定を取り戻した。 ということは、反射的に国債を売った人たちはみな大損してしまったのである。
しかも、前述のように国債市場に投資している九五%は日本人であり、日本に住んでいる彼らは国内に民間資金需要がないことを骨の髄まで知っている。 つまり彼らからして見れば、残った唯一の借り手である政府の国債が投資家間で奪い合いになり、高い価格がつくことは決して不思議なことではないのである。
彼らは国債に高い値段がつく理由がわかっているから、ちょっとしたことではパニックに陥ることもない。 これが最も端的に出たのが度重なる国債の格下げニュースが流れた時である。
以前は国債の格下げが発表されるたびに大きな騒ぎがあったが、何回も格下げが発表になっても国債の価格がびくともしないので、最近は一部のコチコチの財政再建至上主義者以外は誰も騒がなくなった。 しかもこの国債格下げ騒ぎの背景には、格付け機関自身が、日本がバランスシート不況という極めて特殊な不況に陥っていることに気づいていないという問題がある。
つまり格付け機関は、神様でも何でもないのだ。 言論の自由があるなかで、格付け機関が何を言うのも自由だが、彼らの出している分析や処方菱が今の日本に適したものであるかどうかは、我々自身が判断しなければならないのである。
して、彼らの出している分析に問題があれば、彼らの格付けにも当然問題があると言わねばならない。 彼らは、格付けを発表する一方で、どうすればその発行体は格付けを改善できるかも同時に示唆しなければならない。

ところが彼らが「財政赤字が大きすぎるから減らせ」と言うのを見ると、いかに彼らが日本のことを理解していないかがわかる。 日本は実際に一九九七年にIMFやOECDの強い要求を受けて財政再建を実施したら、財政赤字は減るどころか急増してしまったのである。
国内の財政再建至上主義者は格下げが発表されるたびに神の声を聞いたように騒ぐが、格付け機関が神でないことを示す事例はあまりにも多い。 直近ではアジア通貨危機をまったく予想できなかったことがあげられるが、私を含む米国金融当局が最も腹が立ったのは、前述の第一次中南米債務危機の時であった。
あの時は、危機が発生するまで格付け機関はニューヨーク連銀の警告にもかかわらず、まったくノーテンキで何もしようとしなかった。 ところが実際に危機が発生して、米国当局が必死で関係者の冷静な行動をお願いして世界経済全体の安定を確保しようとしている時に、彼らはアホみたいに中南米諸国の格下げをし、当局者の仕事を何倍も困難にしてしまったのである。

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